2013/01/28

展覧会と映画、まとめて。

実験工房展 戦後美術を切り拓く」@神奈川県立美術館鎌倉&鎌倉別館。1950年代という混沌と活気の時代のアートがいかに総括しづらいかは東京国立近代美術館「実験場1950s」でもよく分かったが、そんな中で実験工房の気品の高さは格別。思想の面をもう少し掘り下げてほしかったが、それでも活動の全体像はよく見える企画だ。フィルムセンター所蔵の松本俊夫『銀輪』も、エンドレスで上映されている。

ジョージ・ハーレル写真展「Hollywood 1930-1940」。実はわが職場の裏通りでひっそりやっていたハリウッド・スター写真展。ジョーン・クロフォードクラーク・ゲーブルなど戦前期のMGMスターを軒並み手がけ、戦後はリタ・ヘイワースポートレートも撮った大御所。うっとり。
http://tip.or.jp/hollywood.html
ハーレルの公式サイト:http://georgehurrell.com/

映画女優 高峰秀子」展@鎌倉市川喜多映画記念館。台本の隅に描かれた、高峰さんご本人による女の子のイラストが可愛くて悶絶。あと、ご自身の使用した『浮雲』の台本(服装についてのメモ書きあり)は、もう至高の映画資料と言うしかない。

『ぼっちゃん』(大森立嗣)@松竹試写室。秋葉原無差別殺人事件がベースと聞いて、また『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』みたいな「日本社会に叩き付けるつんのめり気味メッセージ」なのかと予想していたが、実はこれが、イケてない最低男Aとイケてないが最低ではない男B、そして勝ち組イケメンに見えて実は劣等感の権化である粗暴なC、この三人のアンサンブルの妙を見せてくれる、ダテに『まほろ駅前多田便利軒』を通過していないことが分かる労作なのだった。ただ、Aのダメさ加減を強調するあまり、AがCの人殺しを知っていながらCの暴力から必死で逃げてきた女を「僕の許に女性が来た」レベルでしか捉えないとか、Cが看護婦である女を襲撃しようと異常な目つきで延々と病院をうろついているはずなのに病院側のプレゼンスがほぼゼロとか、脚本レベルでいくつか無理をしている。とはいえ、こんな禍々しいパワーに満ちた映画を、シネコンが喜ぶとは思えない。ミニシアターはやっぱり不可欠。

終了前に間に合った、噂の『ルビー・スパークス』@シネクイント。エリア・カザンの孫娘って可愛いの?という興味も隠せないが、それ以前に、青年小説家の創作したキャラクターが現実のカノジョとして同棲するとか、そもそもストーリー自体が反則だろう。二人がプールに飛び込んで水中で愛を確かめ合うって、このシーンはさすがに爆苦笑。最後はその「オトコの妄想」自体に小説家が苦しめられたりもするが、前半のきゅんきゅん攻撃にはもはや陥落寸前。エンドクレジットでそのストーリーを書いたのも孫娘と判明するが、いやいや、「オトコの妄想」をそんなに甘く見てもらっちゃ困ります。草葉の陰のおじいさまに訊いてごらん? とにかく、世の中こんなに腹立たしいことばかりなのに、この歳でこんな能天気な映画観てしまって俺は後ろめたいよ。そういえば『(500)日のサマー』観たのもこの劇場だったな。ズーイーとかゾエとか、ああーもう。