2009-01-01から1年間の記事一覧

ついに最終日

最後のアポイントメント、フランス国立図書館(BNF)のスペクタクル芸術部門。BNFといっても前に行ったシネマテークの対岸(館内の通称「トルビアック」)ではなく、昔からあるリシュリュー館の方。ジョエル・ユートヴォル部長にお話を伺う。ここはまず演劇…

またトリノへ

シネマテークのジル・デュフォーさんと昼食がてらシネマテーク運営について意見交換。ジルさんは、大型プロジェクトの事務方のまとめ役。例えば、現在関わられているのはマノーニさん主導のマジック・ランタンの電子化プロジェクトである。ああ、こういう役…

よかったこと

まだちょっと日はあるが、とりあえず帰国の準備に取りかかる。もらった本や紙資料が多すぎることに改めて気づき呆然。旅の疲れか、体がややだるい。パリは昨日が冬のヴァカンス(というものがあるらしい)の最終日で、朝まで騒いだ人も多かったらしく逆に今…

車と市長とレンタサイクル

パリへ戻る。列車内で研修報告書の骨子を書き始める。記憶が鮮明なうちに少しでも手をつけておくのがいい。さすがに荷物が重いので、モンパルナス駅からタクシーに乗る。運転手さんが、すぐ前を走るヴェリブ(市営レンタサイクル)の自転車を指差して「あれ…

ピレネーの泳者

昨日観た映画。『アルフレッド・ナカシュ、アウシュヴィッツの泳者』@シネマテーク・ド・トゥールーズ(大ホール)。「ミディ=ピレネー地方の映画」という地元ならではの定期プログラムの一本である。ジャン・ヴィゴの映画でも知られる水泳選手ジャン・タ…

レイモン・ボルドに敬礼

シネマテークは市の中心街のトール通り、ルネッサンス期の煉瓦造りの門をくぐった中庭の奥にある。全事業を統括しているクリストフ・ゴーチエさんが待っていて、午前中は図書室と上映事業を、午後はバルマ市の「シネマテーク保存研究センター」に移動して他…

北を忘れる

リヨン・ペラーシュ駅を朝早く出て在来線に乗り、ヴァランスでTGVに乗り継ぐ。14時過ぎ、フランス人が住みたい都市ナンバーワン(だそうです)、トゥールーズのマタビオ駅に到着。同じ快晴でも、ここでは光線の輝きがまったく違う。リヨンでも少し思ったが、…

兄弟の陰に…

リュミエール協会を訪問。ここでは、「リュミエール」とは必ずしも映画の発明者のことではなく「リュミエール家」のことである。ルイとオーギュストの父アントワーヌによる写真製品の製造事業から説き起こし、兄弟の映画以外の発明にも視野を広げないと正確…

リヨン映画通り

永井荷風が銀行員をやっていた都市、リヨン。第一印象、パリよりもさっぱりしていて居心地が良い。特に地下鉄がゆったりしていて清潔だ。明治時代に富岡製糸場を作った人々もここで学んだわけだ。列車の中で考えたのだが、外国へ行って研修をしてくるという…

パリの道の上セーヌは流れる

ジュ・ド・ポム美術館で『アルベール・カーンの撮影技師たちが見たパリ 1913-1928』。先に書いたカーンの膨大な記録フィルムから、パリに関する映像を1982年に編集して88分にまとめたもの。「ドキュメンタリー」でも「トラヴェローグ」でも「ニュース映画」…

車中で思う

快晴のトリノから曇天のパリへ戻る。イタリア人の多くにとって、ニホンなんて日頃は意識の端っこにもない国だろうから、ちょっとした話でも面白がってくれる。「スパゲッティ・ウェスタンを日本ではマカロニ・ウェスタンと呼ぶ」程度の話題で大いにウケてし…

シネロマンは池袋に非ず

映画博物館付属の図書館へ向かう。博物館本体が市の中心のやや東側にあるのに対し、こちらは南西部とかなり遠い。心配したクラウディア・ボッゾーネさんが、いったん博物館まで到着した私を、図書館近くまで行く路面電車の乗り場まで案内してくれる。移転し…

その名はロドルフォ

トリノ映画博物館は、モーレ・アントネッリアーナという市内全体を見渡せる高い塔の中に作られており、展望台直行のエレベーターもある。これを東京に当てはめてみよう。フィルムセンターに行ったら、窓口で「展示室だけの券ですか? それとも東京タワー展望…

雨月一代女

早朝、リヨン駅からトリノへ向かう。国境あたりは一面の雪景色だ。6時間弱でトリノ・ポルタスーザ駅に到着し、ホテルへ投宿。まだ夕暮れ前なので明日の予習とばかりに映画博物館へ行ってみるが、安さを求めて市街地からちょっと離れた宿にしてしまったので、…

時の動きを見る

今日の昼間、アポイントメントをどこにも入れてなくて本当に良かった。朝っぱらからニホンとの連絡に忙殺される。原稿の手直し2つ、返信メール11本。帰国も遠い話じゃないんだなと思い知る。ニホンが22時になる14時頃、ようやく落ち着いてコインランドリーへ…

四つの運動のために

週明けである。いそいそと北の郊外サン・トゥーアン市にあるゴーモン・パテ・アルシーヴに伺う。その名前の通り、ゴーモン社とパテ社の映画を専門に扱う純粋な民間の映画アーカイヴである。とはいってもトーキー以降はいずれもここではなく本社扱い。ここで…

ルネ・クレール主義万歳

それなりに穏やかな日曜日。以前フィルムセンターでインターンをされていて、現在はパリ第3大学でクリス・マルケルの研究をされている東志保さんとオデオン周辺でランチ。とめどなく映画とパリ生活のお話。コンコルドに移動して、ジュ・ド・ポム美術館の地下…

奇跡の猫

こっちでは男女とも同じ美容室に行くのが当たり前だが、わざわざ男性専用の理髪店をネットで調べて行ってみる。こういうお店、昔は多かったが今は消えかかっているそうだ。とはいえ、行ってみると店は新しくて腕もグッドだった。でもって、久々にルーヴルも…

地球の記録 1909-1931

世界の写真史の中で、偏愛に値する技術があるとすればそれはオートクロームではないだろうか。近くに寄ってみると、微細に埋め込まれた三色の粒々が見る者にまた別の感慨をもたらす、20世紀初頭のカラー写真技術である。アルザス出身のユダヤ系銀行家アルベ…

世界でここだけの悩み

午前は、東京から依頼のあった事業の実績報告書を書く。こういう書き仕事であれば、世界のどこにいても逃げられない時代だ。でも今やった方が後で楽になるに決まっている。シネマテークのトゥビアナ館長がご多忙の中を縫って会ってくれた。会議だらけの中に…

詰将棋カフェ

ジャン=フランソワ・ロジェさんはジョン・ランディス特集についてこう言った。「これこそフランス人の好みなんだ。フランス人は、自分らの国にはない純粋な娯楽を求めてどの時代にもアメリカ映画を好んできた」。ああなるほど、と思ったのは、ここ20年ほど…

人生のポテトチップス

本日はCNCアルシーヴの2日目。シネマテークのサン=シール保存庫と同じく、ここも1870年代に建設された砦である。なぜ第三共和制になってパリ郊外に砦なんか?と思ったので案内のミュリエルさんに訊いてみると、パリ市を取り囲む城壁だけではパリは守れない…

助監督かアーキヴィストか

今日から、ボワ・ダルシー市にある国立映画センターのアーカイヴ部門(CNCアルシーヴ)。途中、モンパルナス駅でシネマテークのサン=シール保存庫へ出勤中のマチュー・グリモーくんに偶然出会い、同じ方向なので列車で雑談。アニメ作家のグリモー(『王と鳥…

ベナゼラフ初体験

疲労がたまったので本日は休息モード。でも無為に過ごすことができなくて、やっぱり一本短い原稿を書いちゃった。昨晩は、こちらにサバティカルでいらしている大学時代の先輩のお宅へ参上。ワインを何本も空けてしまって申し訳ありません。フランス・ポルノ…

労働する猫たち…

映画発明以前のヨーロッパ的スペクタクルへの関心をそそられて、というのはややこじつけで、実はサーカス体験が非常に薄い(幼時の記憶がうっすらあるだけ)ことに気づいたので、1852年にナポレオン三世が建てた、パリ市内で現存する唯一の19世紀以前の常設…

遅刻しました

高速地下鉄に乗って考え事をしていたら乗り過ごしてしまった。運の悪いことに、市内を抜けると10駅ぐらい飛ばして郊外へ直行する列車だった。新宿を出て明大前で乗り換えようと思ったのに調布まで行っちゃった感じ。あわててシネマテークへ「遅れます!」と…

高嶺の花か?

かなり楽しみにしていたオンライン編集部門へ行く。つまりヴァーチャル・ミュージアムをネット上に構築する部署である。スタッフは4人。シルヴェット・ボドロ資料を用いた「スクリプターの仕事」ページなどは去年から気になってはいたのだが、細かい資料が多…

忘れた頃に…

編集の福本さんにお願いしておいた「映画芸術」ベストテン号がこちらに届いた。感謝感謝。さっそくセバスチャンが点数表のコピーをとっていった。それにしても『ノン子』なんですか。へー。観てないけど。もうすぐシネマテーク・フランセーズでの研修は終わ…

クレープとサンディカリズム

今日もサン=シール保存庫へ。まずフランソワ・ラフォールさんから、CNCアルシーヴ、シネマテーク・ド・トゥールーズと3機関で共同運用しているフィルム用データベース「リーズ」の解説を受けるが、質疑応答をしたらもう昼食の時間。さすが独立国だけあって…

砦の上にわれらが世界を

起きるとまた雪である。しかし寒波の気配はなく、単に天気が悪いので雪になりました、という感じ。今日は南西の郊外にあるシネマテークのサン=シール保存庫へ行く日だが、高速地下鉄が雪で運転を見合わせていたので仕方なくモンパルナス駅へ移動して国鉄に…