2012/04/29

おとといいらしたチェコの方もそうだが、「ロードショーとスクリーン」展で外国の方が案外じっくりご覧になるのが前売券のコーナーである。劇場売りパンフの隆盛が日本独特のものであることは結構知られているが、前売券(正しくは「特別鑑賞券」)制度の発達も日本独自のものだ。すっかり慣れていてもうあまり意識しないのだが、前売券というのはあんなにちっちゃいくせに、ポスターやチラシに負けじと「私『めまい』です!」「私『未知との遭遇』です!」などといちいち主張しててカワイイ。そのわりに、後になって特定の作品の前売券を見つけるのは、映画パンフ以上に難しい。ほとんどの人は捨てるか無くしてしまう。神田神保町に行けば専門店もあるけれど、そこになければ途方に暮れるしかない。映画資料上級篇である。

ジャン=リュック・ゴダール『東風』@オーディトリアム渋谷。ジガ・ヴェルトフ集団というのは「さらば“映画”よ。これから“政治”の時代を始める」ということになっているが、『東風』はそれでも"映画"を作っているゴダールの言い訳というか、むしろ後ろめたさの記念碑なのかも知れない。バラの花を髪飾りにしてパンをかじるヴィアゼムスキー様に、ああやっぱりゴダールの映画なんだと思う。ユーゴスラヴィア式自主管理社会主義を批判する時だけ画面が真っ赤なのはなぜですかね。まあ、自主配給とはいえ、これが日本で劇場公開された(配給:フィルムアート社)ことはすごい。

雑誌「WEDGE」最新号の「にっぽんの100人の青年」という連載に、映画フィルム復元のエキスパートとしてIMAGICAの三浦和己さんがご登場。一般の方々に伝わってほしい内容がしっかり取り上げられている。日頃は買う気のしない雑誌だが、これは快挙だ。