2012/02/11

少年と自転車』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ)。この映画での自転車は、少年が所有する単なる乗り物ではない。親に捨てられ、人を信じず、口数の少ない少年の、感情表現の手段である。少年の失望も怒りも期待も、そしてラストシーンの絶望的に深い諦念も、すべて自転車から発散されている。『ロルナの祈り』より簡素な文体がいい。

前々から、ダルデンヌの映画でチェックしている70(settante)と90(nonante)。ベルギーとスイスのフランス語でしか使われないこの数字の用法、ダルデンヌ作品に現れるのはやはり意図的だと思う。この映画でも、少年が父親に自分の電話番号を教えるシーンにあった(『ある子供』ではベビーカーの値段だった)。このことにすぐ気づくのは当然フランス人のはずで、これがベルギーの話であることを否応なく意識させる。北フランスの若者の絶望といえばブリュノ・デュモンの映画を想起してしまうが、「あれとは違うんですよ」という国境の向こうからの主張にも思えたりする。