2011/11/19

この大雨の中、香川京子さんトークは満席御礼。市川雷蔵さんは結構毒舌な方でした、というのが少しドキドキしました。

宮脇俊三「時刻表昭和史」読了。そっけない題名を裏切るほどの傑作エッセイ、というかもうビルドゥングスロマンだった。1933年から1945年の敗戦の日まで、宮脇少年の鉄道との関わりが、戦争によって変質してゆく列車のタイムテーブルとともに綴られてゆく。圧巻だったのは、山形県の小さな駅で玉音放送に接し、時が止まったかのように感じていた筆者のところに、いつものように列車が到着するくだり。日本国民誰もが聞かなければならなかったであろう玉音放送に優先して、時刻表通りに列車を動かさねばならないという鉄道員のプロフェッショナリズムがあった。歴史的瞬間の中の日常。国破れて山河あり。

むかし、友人が「牛とは…友だちにはなれないと思う」と言っていた。ユーロスペースで『肉』(フレデリック・ワイズマン)。牧場を埋め尽くす牛たちが商品になってゆく過程を徹底して唯物的に見せてゆく、という構成はワイズマンだから想定内。工場追い込み、屠殺、吊るし、首落とし、皮剥ぎ、内臓出し、部位別カット、パッケージ化。だが肉になるまで、映画としては随分早いなあ?と思っていたら今度は羊さんが。ラム肉になるまでを同じように撮るから途方に暮れる。さすがです。