2011/11/07

コンビニのフランクフルトを食ってから観るのも我ながら疑問だが、『エル・ブリの秘密』(ゲレオン・ヴェツェル)。この7月に人気絶頂のまま突然閉店した、料理界の革命児フェラン・アドリアのレストラン「エル・ブリ」のドキュメンタリー。廣瀬純の「美味しい料理の哲学」でも紹介されてます。このレストランは半年しか営業せず、あと半年は全スタッフが新しい料理の研究に費やす。「この素材をこう処理したらどんな味になるか」という実験を延々繰り返すのだが、若い料理人の提案をまず先輩シェフが批評し、言下に否定されることもあれば、認められてアドリアの味見にたどり着いた結果、新メニューとして採用されることもある。天才が支配するだけではなく、ちゃんと後進を育てるシステムになっている。そしてヌーヴェル・キュイジーヌの進化形であるため、ここのディナーは35もの細かい料理の組み合わせになる。だから厨房が猛烈に忙しく、やたらと多くのウェイターが歩き回っているので、これで人がぶつからないとすればウェイターの動線も考え抜かれているのだろう。忙しい厨房の裏で、実はアドリアも食べている。だがのんびり味わっているのではなくて、見て触れて食べながら即興でアドバイスを与えている。あれだけ食材の実験を重ねて、さらに直前のひらめきも大切らしい。現代料理だなあと心から思うのは、すべての実験結果をデジタルカメラに撮ってデータベース化していること。何しろアドリアがいちばん怒りを露にするのは、調理のミスではなく、料理人がパソコンのデータを失ってしまった時なのだ。先輩シェフが「プリントアウトはありますから」とかばっても、アドリアの怒りは収まらない。まさにデジタル時代のキュイジーヌ。こんどオブラートで餃子作ってみようかな。

そして、四十男がひとりカテキン緑茶片手に観に行くのも我ながら疑問な『モテキ』(大根仁)。賛否の両側から感想聞かせてくれと言われてさすがに気になり。まあ、商品としては充分に成立している。今どきそれだけで満足してもいい。ただ、普遍的な説得力を目指すことなしに、観る側の「あるある」感をかき立てることに専心するのは映画として本質的じゃない。ラストの泥だらけシーンもさすがに弱いのでは。でもいずれ、森山未來を主人公にしたミュージカル映画が撮られるといいと思う。