2011/10/24

やや早起きして六本木のTOHOシネマズへ。東京国際映画祭香川京子さんのFIAF賞授賞式、そして香川さん畢生の名演である『近松物語』の上映。久しぶりにスーツを着る仕事だ。FIAF賞のトロフィーはメキシコ産純銀のフィルム缶で、きらきら光っている。久々に観る『近松物語』の隙のないフォルムに圧倒された。

昼下がり、東銀座に移動して試写『汽車はふたたび故郷へ』(オタール・イオセリアーニ)。ソ連時代のグルジアから追放された若い映画監督。フランスへ行くが、今度は愚かなプロデューサーに翻弄され、映画をズタズタにされる。どんな環境にあっても、人や体制に自分を合わせることのできない頑固者のバラード。自分の人生を重ね合わせたせいか今回はいつも以上に哀調を帯びているが、要するにこの映画は「歌わないつぐみがおりました」だろうか?

夜は、神楽坂の地球映像ネットワークで『相馬看花 第一部 江井部落』あらため『相馬看花 奪われた土地の記憶』(松林要樹)。山形映画祭で観られなかった雪辱なり。いま私たちが触れなければならないものを、撮る側が自然に(苦労なくという意味ではない)つかみ取っているという印象を受ける。それは「数値」や「代表的意見」に還元されない人間の個別の声だ。メインの登場人物である市会議員の婦人が、避難所から一時帰宅した際、夫がトラックに荷物をやたら乗せようとすると、ぶつぶつと文句を繰り返す。家族へのそんな何げない苦言にまさに「声」が露呈している。素晴らしい。