2011/09/21

神聖かまってちゃんのPV大会で夜更かしするのは、いい加減やめようと思った。

こんな大荒れの日こそ、仕事を大前進させるチャンスなのさと電話入れに邁進。だが、台風が首都圏直撃の16時から18時あたりに外勤が入ってしまっている。地下鉄駅の出口から、お目当てのビルまでが決死の突撃だ。スタッフも連れているのでそれとなく責任も感じたり。到着してみると、お会いした方々から「大丈夫でしたか」と真っ白なタオルを差し出されて恐縮。打ち合わせの場所はビルの13階、暴風で建物全体が揺れているのがはっきり分かる。確実に震度2ぐらいはあった。

こんな日に、われらが大ホールはよりによって『サタンタンゴ』。風雨吹きすさぶ浮世から遊離して、どんよりとした7時間18分を過ごすのもそれぞれの方の特別な一日となったことだろう。わざわざ映写室へリールを見に行く。ドイツから借用した全26巻。しみじみ。月末にまた渋谷で上映するらしい。

だから私も怠けていてはいけない。銀座から渋谷まで40分かかったのは閉口したが、とにかく「KINOTRIBE 2011」で深田晃司監督の『ざくろ屋敷』がかかるというので駆けつける。二人の息子とロワール川のほとりの屋敷に落ち着いたが、小さい彼らを残して病に倒れた謎めいた婦人の肖像。バルザックによるその一篇を、深澤研氏による約70枚の油彩画やテンペラ画(絵コンテ段階では200枚もあったとか)で、キャメラ移動はあるものの、アニメートすることなく固定画像のままで描き切る。まず、こういう世界観で映像作品を作ろうという人たちが日本にいるだけで感服。深澤氏は、ストーリーを絵画化するまでの時代考証だけで半年をかけたという。そして同じ構図での光の繊細な変化は、撮影レベルの操作ではなく、あくまで別の絵を制作することで表現される。モネのように。そういう視覚的な洗練が禁欲的な手法にマッチして、母を失った少年の絶対的な孤独の自覚がくっきり浮かび上がってくる。上映が終わると、もう雨は止んでいた。