2011/09/10

ニホンの地方都市のが抱えるどんづまり感や鬱屈に対して、映画はここまで『サッド・ヴァケイション』的アプローチだけで対抗してきたが、『サウダーヂ』を観て、まだその先にもアプローチの方法はあると分かった。ただこの映画の、意図的に昂揚を拒む平たい文体が、かえって異様に感じられるのも事実だ。

香川京子の初期作品、1950年の『東京のヒロイン』(島耕二)。東和に復帰する前の野口久光がプロデュース、美術が河野鷹思という前期新東宝ならではの華やかな布陣。雑誌編集者の男(森雅之)と同業の女(轟夕起子)が仕事上の接触から徐々に近づいてゆくが、ハリウッドのロマンティック・コメディを摂取し、街角でのダンスや音楽をふんだんに取り入れた構成はまさに野口イズムの開花。バレリーナも夢見たという香川さんが、小牧バレエ団の一員となって踊るシーンも見られる贅沢な一品。ただの酔っぱらい役だった潮万太郎が、結末でアクロバティックな酩酊ぶりを見せるのも意外な展開で笑えた。

ご案内二つ。まずは9月17日の場外シネマ研究所企画「轟轟烈烈!中国インディーズ・ムービー パート1:北京のざわめき」。2本の中国ドキュメンタリー、そして大津幸四郎氏のトーク。渋谷の光塾というスペースが良さげでとても気になる。

そして、10年前の9月9日に亡くなった映画作家に捧げられる決定的な一冊「甦る相米慎二」。9月30日発売予定。私も恥ずかしい一文を寄稿。10月1日には、アテネ・フランセで感動的な面々によるシンポジウムがあるようだ。この秋は相米の秋と心得よ。

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