2011/09/09

照明作業を除いてすべて展示工作終了。チラシの裏面に使用した『山椒大夫』撮影中の8枚組スナップ写真、すでに何人かの方をどぎまぎさせているそうだが、パネル化してみて改めて自分もどぎまぎ。

と思っていたら、「MIRAGE」第3号を拝受。噂には聞いていたが長谷正人さんや市山尚三さんのインタビューに四方田犬彦氏の寄稿。心意気というものか、あるいは「シネマグラ」の再来という理解でしょうか。よく読むと東京国際映画祭矢田部吉彦さんや新文芸坐矢田さんのインタビューまであったり。ブラボーの一言なのだけど、この雑誌どこまで行くんだろう。少なくとも言えることは、これを編集した学生たちは絶対に成長する。

ついに観た『サウダーヂ』(富田克也)@渋谷オーディトリアム。会場のロビーに着くと、平均年齢がなんだか若い。受付に立っていたプロデューサーの伊達さんは大学時代の先輩で、当時は映画とまるで無縁でいらしたから、いまこうして話題作のプロデューサーとして会うのは実に奇妙な気分。だが、これはこれで人生の面白みと思ったりする。映画を織りなす要素は、肉体労働だったりヒップホップだったり外国人労働者だったり崩壊家族だったりシャッター商店街だったり、それこそ無数のスケッチから成るのだが、しかし、そうやって簡単にカテゴライズされることを頑強に拒む、しぶとい文体がある。特に、シーンとして安定する前に次の場面に移行してしまう変則的な編集が面白く、167分はまったく長くない。打ち上げの末席に連なり、この映画をロカルノ映画祭に売り込んだ陰の立役者小山内照太郎くんとも再会する。製作から流通に至るまで旧来のスタイルを踏襲しないこの「生産者直売」映画、要するに映画であると同時に「運動」なのだ。ラスト、BOOWYわがままジュリエット」の使い方がうまかった。盛り上げる価値のある一本。