北を忘れる

リヨン・ペラーシュ駅を朝早く出て在来線に乗り、ヴァランスでTGVに乗り継ぐ。14時過ぎ、フランス人が住みたい都市ナンバーワン(だそうです)、トゥールーズのマタビオ駅に到着。同じ快晴でも、ここでは光線の輝きがまったく違う。リヨンでも少し思ったが、「パリにうんざりする」という感覚がここではっきりした。

この街は、中心地区なら頑張ればどこでも徒歩で行ける。明日の訪問に備え、トリノの例にならってシネマテーク・ド・トゥールーズを事前偵察。明日行けばいいようなものだが、我慢できずつい足が向いてしまう。受付のホールが展示コーナーにもなっていて、1910年代前半のポスターが飾られている。私は田舎の出身なので「地方都市におけるシネマテーク」というあり方に前々から関心がある。周辺自治体を合わせて人口約100万人とは日本なら仙台市北九州市ぐらいである。もはや伝説の映画批評家レイモン・ボルドが設立したこのフランス第二のシネマテークに、映画文化と地域住民との溶け合い方の一例を確認しようと思う。

帰りにガロンヌ河の近くを通ってみると、たくさんの人が岸辺に腰かけて語り合っていた。大学都市のようで若い人がとても多く、見ただけで入りたくなる可愛いカフェがいくつもある。オック語の挨拶を二つか三つ覚えて帰ろうと思う。