四つの運動のために

週明けである。いそいそと北の郊外サン・トゥーアン市にあるゴーモン・パテ・アルシーヴに伺う。その名前の通り、ゴーモン社とパテ社の映画を専門に扱う純粋な民間の映画アーカイヴである。とはいってもトーキー以降はいずれもここではなく本社扱い。ここでは劇映画なら無声映画しか扱わない。しかし記録映画・ニュース映画は時代に関わらずすべてここ。ルイ・フイヤード作品の復元を手がけたアニェス・ベルトラさん("Agnes. B"と名乗られてました…)に事業概要をご説明いただくが、何しろここは自社の映画しか扱わないから、著作権について心配する必要はゼロ。「復元」とはいっても民間だけに、ここだけでできることはDVD水準。フィルム水準の本格的な復元はお金もかかるのでやっぱりシネマテークやCNCアルシーヴと共同でやるしかない。採算が簡単に取れる部門とは思えないだけに、こうやって15人のスタッフが働いているのは立派なもの。このアーカイヴ、ウェブサイトに登録さえすればデジタル化済みの映像がネット上でバンバン無料で観られる。すごい。

今回はパリ北部にはあまり用事がなかったので、いいチャンスとばかりに帰り道にモンマルトル墓地へ寄ってゆく。ここは何といってもスタンダールとゾラで、映画界ではトリュフォーとギトリ家、さらにアンリ=ジョルジュ・クルーゾーという大物が眠っている。作曲家ジョセフ・コスマのお墓に「枯葉」のさわりの部分が五線譜で彫られていたのも泣けた。しかししかし、私の本当の目的はシャルル・フーリエの墓を訪ねることだ。調和ある世界を構想しようとして、結局突拍子もない書物ばかり世に出すことになったこの男を私は深く尊敬している。馬鹿だと言われても構わず、世界をいったん最初から考え直してみること。その奇想はわが脳天を永遠に刺激する。「情念引力」によって生きてゆける世界が来るまで、私はとりあえず様々な不自由を忍んで日々の仕事に励みます。ありがとうございました。

夜はずっと夏の展覧会の構想を練る。東京で考えるより集中できていい。資料がないのが困るけど。