ルネ・クレール主義万歳

それなりに穏やかな日曜日。以前フィルムセンターでインターンをされていて、現在はパリ第3大学でクリス・マルケルの研究をされている東志保さんとオデオン周辺でランチ。とめどなく映画とパリ生活のお話。

コンコルドに移動して、ジュ・ド・ポム美術館の地下ホールでルネ・クレールの初期短篇『眠る巴里』『幕間』『塔』、そしてウージェーヌ・デスラヴの『モンパルナス』と『電気の夜』。『眠る巴里』はいわゆる名作なのにフィルムセンターに所蔵がないというだけの理由で未見。いやーこれ、子ども向け上映に最適の映画だなー。まとめて観ると分かるが、このクレールの3本は互いにつながっているのだった。フィルムセンターの『幕間』は無声だが、これはエリック・サティの華麗なスコアを1967年に録音し直した版で、こんな楽しい映画だったのかと今回ようやく気づいた次第。でも『塔』はシネマテーク所蔵プリントなのでフィルムセンターのと同じ版(トーキーフレームで左側カット!)。というわけで、自分がルネ・クレール主義者だったことも再確認できたコンコルド広場の午後であった。あのう、躊躇してる方、クレールは絶賛していいんだからね! さてデスラヴは初めて観るが、1930年のパリやベルリンなどの電飾やネオンサインだけで構成された『電気の夜』は、ラスト近くになるとオスカー・フィッシンガーの絶対映画みたいになってきてかっこいい(「電気」と言いつつ最後は花火じゃん)。デスラヴはウクライナ人の白系亡命者で、チェコを経由してパリでこういう映画を撮ってから1939年からはフランコ治下のスペインで活躍したという右翼っぽいアヴァンギャルディストらしい。『モンパルナス』では藤田嗣治が一瞬出てきてびっくりした。上映前にローザンヌ大学のフランソワ・アルベラの解説があり、「ご覧になる前に私がしゃべり過ぎるのもなんですが」とか「そこの2歳ぐらいのお子さんは飽きているでしょうが」とか「もうすぐ上映にしますからあと少し」とか意識的に付け加えながら25分をしゃべり切ったのが素晴らしかった。

夜は、高橋晶子さん&ダニエル・サンドバルさんご夫妻のお宅にお招きいただいて夕食。ダニエルさんと知り合ってもう10年になることに気づく。彼が率いるチリのラ・セレナ無声映画祭(今回で第8回)の写真を見せていただいた。ラテンアメリカの地方都市の映画祭は、ヨーロッパの映画祭ともまた違う祝祭性があるようですごく楽しそう。今晩はお食事も素敵だったが、ダニエルさんから映画アーカイヴ界の裏話をいろいろ聞いてそちらもおなかいっぱい…。