世界でここだけの悩み

午前は、東京から依頼のあった事業の実績報告書を書く。こういう書き仕事であれば、世界のどこにいても逃げられない時代だ。でも今やった方が後で楽になるに決まっている。

シネマテークのトゥビアナ館長がご多忙の中を縫って会ってくれた。会議だらけの中にクロード・ベリ追悼セレモニー(彼は2003年から2007年までシネマテークの理事長だった)にも忙殺されていたはず。私がスタッフ数や事業の拡大、質的な深まりについて率直に素晴らしいと述べたら、あまり詳しくは書けないが、というより私なんぞに明け透けに話すのかとも思ったが、要するにBIFIの統合以来組織が重くなりすぎて運営の苦労が並大抵ではない、と熱っぽく語られた。ほとんど一つの村をなすロシアのゴスフィルモフォンドのような社会主義式アーカイヴ(行ったことないですが)を例外とすれば、200人以上を擁するここは紛れもなく世界一の映画資料館である。だから館長の悩みも世界でここだけの悩みかも知れない。フィルムセンターの小ささはいつも悔しく思うけれど、それでもシネマテークはここまで大きくならなくてもいいのかな、とも思った。「4月からはジャック・タチの上映企画と展覧会です。これからは、シネフィルの方だけを向くのではなく、もっと新しい大きな観客を獲得しなければいけません。タチはその一環ですし、例えば今やっているメリエスの展覧会もそうで、すでに大成功を収めています。多くの先生が子どもたちを引率して来てくれました」。この指針はもちろん日本にも該当するが、ここでは組織の拡大に応じた責務でもあろう。それを「カイエ・デュ・シネマ」の敏腕編集長だった人物が言うのだから重みが違う。

今週から、スーパーだけでは飽きるので個人商店で会話しながら食材を買う、バスで移動する(京都市バスの方がよっぽど複雑じゃん)、食材や料理法の語彙を増やす、など生活面の現地化を深める努力をしている。だからどうって話でもないけど。明日は待望のアルベール・カーン博物館だ。