文豪現る

先日ちょっと覗いてみた、フランソワ・トリュフォー映画図書館を正式に訪問。ベテラン司書のジョスリン・ル・ダルズさんに案内していただく。ピンクと赤を貴重にした派手な内装からはやや想像が難しいが、ここもパリ市の長い図書館運営史の蓄積の末にできたものである。2006年まで、その多くは6区にある別の市立図書館の映画書部門をなしていたもので、収集開始以来「独立」を果たすのに40年近くかかったそうである。命名の由来は、トリュフォーの右腕だった脚本家ジャン・グリュオー(ご存命です)の個人資料が寄贈されたこと。原則すべて貸出可なのは市立図書館の共通ポリシーとのことで、本だけじゃなくDVDまで貸しちゃう。というわけで、かなり高い権利料を払っているようだ。貸出は、借りたい人が自分でオートマチックの貸出マシンを操作して手続きをするしくみ。かっこいー。フィルムセンター図書室と同じで午前中は閉館。その分、グリュオー資料を特別閲覧する研究者の姿が見られた。

16時からピラミッド駅近くのカフェで、ドゥマゴ文学賞を受賞した中原昌也さんの記念イベント。先日誘ったらめちゃくちゃ喜んでいたセバスチャンも連れてゆく。会場に入ったら「半分ぐらい知ってる人、はは」と中原さん。レザンロキュプティブル誌のジュリアン・ジェステール氏を司会に迎えたが、当然日本語の本は読めないのでさすがにあの清らかな負のエネルギーの世界を理解できるはずがない(そもそも通訳さんが苦しんでいた)。中原さんは幾度も笑わせてくれたが、対話としては今ひとつ噛み合わないまま終了。その後どっさり15人ほど別のカフェへ流れて雑談。中原さんがいまシネマテーク何やってるのと訊くのでお答えしたら「ランディス来てるの? 会いたいな! 映画全然好きじゃないけど会いたい!」。

とはいえまあ、フランス人から、青山真治監督とはどう知り合ったか、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』の撮影中はどうだったか、なんて質問が入る時代になったことはよかよかと思ったとです。