「私はたった一人でした」

非フィルム部門の収集部長、マリアンヌ・ド・フルリーさんについにお会いできた。現在のシネマテークの最古参で、30年前は誰も見向きもしなかった非フィルム部門をたった一人で立ち上げた伝説の方である。アンリ・ラングロワ本人を知る恐らく唯一の現役職員で、というより母親がシネマテーク職員だったため少女時代からラングロワと面識があったという。気の遠くなるほどの映画人たちと渡り合ってきた彼女にはここの誰もが一目置いており、部下の方の呼びつけ方にもとにかく貫禄がある。「フィルムより注目されないので不安でしょうが、自分の仕事を信じて前進してください。将来フィルムがなくなる日が来ても、非フィルム資料だけは本物ですから」。最敬礼!

タネール『どうなってもシャルル』@シネマテーク。人生の味わいは逃亡にあり。なるほどミシェル・シモンに敬意を表して『素晴しき放浪者』の見事な裏返しか。

帰り際、サン・ミシェルの地下鉄通路で演奏している青年のギター弾き語りが100人近くも集める大人気で、道が塞がって乗り換えもできない状態。通りがかりの観衆がみんなで合唱したり踊りだしたり。ニホンでは絶対見られない光景だけに、ちょっとした拾い物。