フランス男は色男…

「人は週末には休まなければならない」。こちらの週末にはそういう空気が漂っている。初めて来た19年前と比べれば日曜に開いてる商店は多いようだが、それでも人に仕事をさせない無言の圧力がある。というわけで今日は、パリご滞在中の専修大学の土屋昌明先生とサン・ミシェル界隈で昼食をご一緒した。中国文化・思想史の専門家として、一年間コレージュ・ド・フランスの漢学研究所で調査研究を重ねておられるとのこと。しかし私にとっての土屋さんは、何といっても「目撃!文化大革命 映画『夜明けの国』を読み解く」の編著者を務められた文革の専門家。文革の研究書はフランスでもかなり出版されているそうで、さらにフランスの中国研究の現状、フランスから見える中国現代文化の風景がこれまたいかに興味深いか、刺激的なお話がたっぷり聞けてよい週末だった。『二十四時間の情事』は劉小奇の時代だったので人民中国でも公開が実現して評判となり、今では“懐かしの外国映画”の列に数えられているそうだ。

ジャック・ターナー特集より『女海賊アン』@アクション・クリスチーヌ座。テクニカラーによる、ジャンルとしては絵に描いたような海賊映画。もちろん場所はカリブ海。男まさりの海賊船船長ジーン・ピータースが、襲った船のフランス人船員ルイ・ジュールダンだけは殺さず救ってあげる。生まれて初めて恋に目覚めたから…。ジュールダンもこの地図の宝を見つけたら一緒にパリに住もう、なーんて言ってるがその正体はフランス海軍の軍人で妻もいたりする。嫉妬にかられたピータースはその妻を奴隷市場に売ろうとするが、そこへ夫の船が都合よく! しかし夫婦島流し! 島流ししておいて船長泣き崩れ! と映画はかなり陰惨な方角へと流れてゆくのであった。お宝の話はどこへ行ったんですかね。「フランス男は色男」みたいなクリシェには、客席から押し殺したような笑いが漏れていた。少なくともジュールダンはそんな色男には見えないっす。