17階の幻燈機

朝、パリ市役所のジャック・プレヴェール展へ赴いた。昨日イザベルさんから、いま資料を貸与している一例として紹介された展覧会だ。プレヴェールは詩やシャンソンを書いたり映画シナリオを書いたり絵を描いたりコラージュを作ったり大変忙しかった人なので、展覧会も手が抜けない。市役所でやってる無料の催しがこんなに充実してていいのかと思うほど。シネマテークから貸し出されているのは主に映画ポスター。『天井桟敷の人々』の横長の大ポスター、評価額35000ユーロ(約450万円)と知って眺めるとまた感慨も違ってくる。ジュリエット・グレコが胸元に二つの拳を寄せて歌う「枯葉」の映像の前に、パリジャンおやじがぞろぞろと集まっていた。

今日からはローラン・マノーニ映画技術部長による機材類の研修。場所はベルシーではなく、セーヌ川の向こう岸にある国立図書館BNF)の17階を借りている。マノーニさんは、19世紀からのパリ市の公文書や18世紀からの特許資料を集めて分析し、映画の発明にいたる視覚装置の歴史を発掘してきた、いまや世界の映画技術史研究の重鎮。今日目にしたものは、自分のメカ音痴もあいまってほとんど説明が不可能。一つ言えるのは、約17000枚あるという幻燈(マジック・ランタン)の板の画像をデジタル化してデータベースにするというシビレそうなプロジェクトが始まっていることで、今年中にマジック・ランタン展も開催するとはうらやましいの一言。

ここのコレクションのベースは常設展にもたくさんあったウィル・デイのコレクション(英国人なのでイギリスの機械が多いです。映画を発明したのは英国人R・W・ポールだと信じてたとか)とその後の収集品だが、現在は国立映画センター(CNC)からも大量の機材を預かって管理している。つまり「シネマテーク・フランセーズ所蔵の国立映画センターコレクションが国立図書館で保存されている」という複雑な状況になっているわけだが、そんな複雑さも諸機関の活動が前進した成果だろう。