ドゥミーの隣に座る


ニホンのニュースを調べてみると話題が相変わらず「派遣村」だったりするので、昨日単なる思いつきでコリューシュ関連の本を買ってみた。コリューシュのあれこれAからZまで、つまり「コリューシュ辞典」。フランス人なら知らぬ者のない人気コメディアン(1986年オートバイ事故で没)だが、何といっても現在は困窮者向けの食料支援団体「心のレストラン」(RESTOS DU COEUR)の創設者として語り継がれている。僕は彼が主演した『チャオ・パンタン』という映画がとにかく好きで、ユーロスペースはこの映画をいつ再映してくれるのか気が気でないのでだが、しかしフランス国民ではないので彼のことは『チャオ・パンタン』以外ほとんど知らない。というわけで本を買ってみた次第。マルグリット・ユルスナールとコリューシュをくっつけてカップルにしよう、という突拍子もないジョークがあったとは…。そしたら何とまあ、『チャオ・パンタン』の監督クロード・ベリが他界してしまったではないか。街角のキオスクでもその死は大見出しで報じられていた。大プロデューサーでもあるが、実はいい監督だったと思う。ちなみに「世界映画大事典」のベリの項、私が書いてます。宣伝。

本日はイザベル・レジェルスペルジェールさんのところで、映画資料の貸与システムや美術館・博物館とのやり取りについて学んだ。自分が東京でやってる仕事にこんなにぴったりの“学校”があるなんて、としみじみ感動。こちらも質問がぽんぽん出てくる。

やや早めに終わったので時間ができたのだが、もう行くべき場所は決まっている。モンパルナス墓地。映画人密度の高いこの墓地に行くことは出発前から決めていた。小雨が降っているが関係なし。自分のためのメモにもなるので、訪れた墓のうち主なものを記す。マルグリット・デュラスサルトルボーヴォワール。デルフィーヌ・セイリグ。ボードレールトリスタン・ツァラマン・レイは見つからなかった。ウージェーヌ・イオネスコ。アンリ・ラングロワ(世界の映画の記憶を丸ごと埋め込もうという勢い)。ジーン・セバーグ(愁いのあるお墓)。ジョルジュ・オーリック。ピエール=ジョセフ・プルードン(空想社会主義は私の昔からの情熱なり)。セルジュ・ゲンズブール(ここの一番人気。本当にファンのメッセージと花束と似顔絵とお人形だらけ)。スーザン・ソンタグクロード・ソーテジャック・ドゥミー(横にベンチがあって一緒にゆっくりいられるのが素敵)。フリオ・コルターサル(墓の前で「石蹴り」の真似をしてみた)。ジャック・ベッケル。あとジャン・パンルヴェの墓はガイドに載ってないので管理事務所に問い合わせて探り当てた。短い時間でかなり回れた。そして写真は、上に挙げなかった映画人のお墓。この人の“旅”はとりわけ長かった。その途方もない旅の終わりを静けさが包んでいた。