いきなり河野鷹思

ヨーロッパの一月だからまあこの程度は仕方ないか、と思える気温になった。独りじりじりとステーキを焼く夜半もまたよろし。

昼食は、ポスター担当のセバスチャン・ボンデッティさんらとご一緒した。私がヴィニョ課長にお渡ししたフィルムセンターのソビエト映画ポスターのカタログをご覧になったというので、このコレクションの来歴や背景を説明した。袋一平が1930年にモスクワで入手したとお教えしたら、すかさず「キヌガサもその頃ソ連に行ってるね」と切り返してくる。ひゃあ。日本の戦前期ポスターの話になると「松竹の美術監督でポスターも描いたいいデザイナーがいたよね」。河野鷹思を知ってるっすか。最後は「今はマンダクニトシの映画が素晴らしい。"KISS"は最高だ」。シネフィルだけど、それを一歩も二歩も超えた何かが感じられる。こういう若い人が静かに日々の仕事をこなしているのもシネマテークだよなーと頷かされた。

自分の関わった出版物を持ってゆくと、こっちもそれなりに頑張っていると分かってもらえて嬉しいもの。初期ソビエト映画のポスターはさすがのシネマテーク・フランセーズも弱いそうで、心の中でちょっぴりVサインだったが「トゥールーズには結構あるはず」とのこと。

ところで、東京でこれをお読みの方はソビエト映画ポスター展にぜひ足を運んでくださいね。そして、カッコいいのに値段のお手頃なカタログも必ずお求めいただきますよう、セーヌの川べりから切にお願いいたします。