パッション・シネマ

昨日は生意気なことを言ってすみませんでした、ラングロワ先生。先ほど常設展"PASSION CINEMA"をぐるっと回ってきたのですが、やっぱりこのコレクションの厚みには何びともかないません。19年ぶりに『ひとで』のヒトデにも再会しましたし、初期映画の機械類からなるウィル・デイ旧蔵の圧倒的なコレクション(1959年シネマテーク・フランセーズが購入)も先生のご威光あってこそです…。

現代の映画保存界ではマイナス評価が強調されがちなアンリ・ラングロワだが、この常設展は、非フィルム資料から彼の再評価を始めようという新世代からのメッセージと受け止めた。2年前に出版されたローラン・マノーニさん(来週お世話になります)のシネマテーク・フランセーズ史もちゃんと読まないといかんね。

とりわけ1968年の「ラングロワ事件」のコーナーには戦慄が走った。ドライヤーやらラングやらミネリやらキューカーやら世界の映画人から届いたラングロワ館長解任反対の電報はつい読みふけってしまう。ニホンからの電報は連名で、いま覚えているだけでも羽仁進・勅使河原宏小林正樹黒澤明熊井啓市川崑牛原虚彦成瀬巳喜男三船敏郎依田義賢京マチ子(!)といった面々が並んでいた。そのすぐ後に、1969年に設立された国立映画センター(CNC)アルシーヴのコーナーがあったのだが、シネマテークの常設展でCNCアルシーヴが紹介されているなんて、それこそフランス映画保存史上の決定的な一歩に他ならず。ここは何度でも訪れる価値がありそう。