映画資料語で話す

寒いってだけで話題が次々に出てくるぐらい寒いわけだが、見ていて実に痛々しいのが、カフェの建物内が法律で禁煙になったために無理にテラス席に陣取っている愛煙家の方々。しかもこのおじさん、生ビールを注文している!

本日はまず資料課長のヴァレリー・サンロマさんから非フィルム資料の寄贈受け付けや管理システムについて説明を受けた。資料の出し入れを司るデータベース"CINEMOUV"も拝見したが、あまりの丁寧な作り込み方にこれまた悶絶。午後は、ヴァレリーさんの部下のマリー・ベルグさんに引率されて18区の資料保存庫を訪問。ルイ・フイヤードの直筆手紙とかマックス・オフュルスがドイツ語で書き込んだシナリオとか気が遠くなるような資料が山積みだったが、ことのほか冷静でいられたのはスタッフの皆さんの志が自分らの志と根底では同じと感じられたからかも知れない。

実は今回、かなり英語に頼るだろうと予想していたのだが、今のところフランス語だけでどうにかやっている。自分のフランス語能力の限界は分かっているので、恐らく別のものがそれを補っているはず。むかし蓮實重彦が「映画語」なる概念を提唱していたが、私を後押しているのはきっと「映画資料語」に違いない。映画文献図書館(BIFI)がシネマテーク・フランセーズに合流したのは2007年。それ以前にシネマテークが収集してきた文献も、いま旧BIFIのスタッフによって着実に整理分類されている。アンリ・ラングロワの乱脈収集の尻拭いを黙々とこなしている彼女たちが、新しいシネマテークを豊かにしていることは明らか。上映企画がかっこいいとかはシネマテークのなすべき仕事のほんの一面に過ぎないのだ。

てなことを思いつつ、学生街のメディシス・ロゴス座でシネマテークのデジタル復元による『歴史は女で作られる』を観てきた。贅沢な、あまりに贅沢な…。リハビリには絶好の映画だろう。部屋に帰って、昨日作った肉と野菜の煮込みをちょっとずつ食べている。