2014/12/27

2014年の映画の展覧会ベスト5を、誰に言われてもないですが勝手に発表します。フィルムセンターの企画は除外します。
1 ティム・バートンの世界(森アーツセンターギャラリー)
2 映画をめぐる美術(東京国立近代美術館
3 松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて(世田谷美術館
4 野口久光 シネマ・グラフィックス(京都府京都文化博物館
5 淀川長治 映画の部屋(鎌倉市川喜多映画記念館)
次点 岳人冠松次郎と学芸官中田俊造(北区飛鳥山博物館)
次点 東欧アニメをめぐる旅(神奈川県立近代美術館葉山)
名実ともに世界水準の企画である「ティム・バートンの世界」が日本に来たことの意義は大きい。「映画の展覧会」という分野のマイナーさを苦もなく突破し、新時代を画したと言っても大げさではない。「映画をめぐる美術」は映画の側からは驚くほど注目されなかったが、現代美術作家と美術館が映画に対してできることを追求した結果として、より正当な評価を受けるべき。正直に言うと、興奮させられる作品もあれば、まったく関心の抱けない作品もあった。所詮、住む世界は違うのだ。それだけに、映画の側からのしなやかなレスポンスが欲しかった。さて、印象の強烈さからいえば今年随一だろう「ユートピアを求めて」は、松本瑠樹コレクションが日本の宝であることを再認識させてくれる。初期ソビエト映画のポスターだけではない、その全貌が明らかになるのはいつの日だろうか。「淀川長治 映画の部屋」は、まず映画評論家にまつわる展覧会という企画が先駆的。さらに「読ませる展覧会」としても成立している。「岳人冠松次郎と学芸官中田俊造」は主題として激しくシブいが、戦前の山岳ドキュメンタリーへの調査の精密さが一目で分かり、今年の隠れた名企画だろう。カタログもおすすめ。「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」(東京都現代美術館)は参加型の展覧会として画期的だが、展示としてはやや弱いか。一方、実はなかなかの迫力があったのが飯田橋ギンレイホール主導の「名画座主義で行こう」の展示(飯田橋ラムラ)。映画館写真も見逃せないが、何といっても戦後復興期の国産映写機の威容が素晴らしい。あと「水木洋子展」(市川市文学ミュージアム)は、いつもながら地元での調査研究の深みが出ていて好印象を持った。残念ながら今年は「恵比寿映像祭」は逃してしまった。展覧会で観た映像としては、フィオナ・タンの個人的映像アーカイブ論『影の王国』(東京都写真美術館「フィオナ・タン まなざしの詩学」企画内上映)の優しさがいちばん心に沁み入った。