2014/07/03

2014年7月2日
シネマテークの展覧会は、いつも常設展・企画展(大)・企画展(小)の三つ。で、映画保存史を主題とする世界初の大型展覧会ではないかと思われる、企画展(大)=アンリ・ラングロワ展が今回の渡仏のもう一つのハイライト。何しろシネマテークを創った人だから資料も膨大にあるが、その生涯をたどるメインの部分とは別に、レジェやマチスなど現代美術の目利きとしてのラングロワを紹介しているのが、いかにも映画と美術をまたぐドミニク・パイニ氏のキュレーションらしい。とはいえ、やはりいちばん泣けるのは、1968年の「ラングロワ解任事件」の時の、警官隊に囲まれながら息せき切って反対声明を読み上げるジャン=ピエール・レオくんの映像(無声)だろう。そして企画展(小)のアモス・ギタイ展は、こちらが初期のギタイ作品を知らないせいで理解が不十分で申し訳ない。それでも、もしブームを持った録音スタッフがいなかったら本物の戦場写真にしか見えない『キプールの記憶』の撮影スナップには圧倒された。あと常設展の特別コーナーではジャン・コクトー資料を展示していて、ヌーヴェル・ヴァーグ前史で必ず言及される1949年の「呪われた映画祭」@ビアリッツのオリジナル・ポスターがあったのは感激しました。
20時の深作欣二特集オープニング上映『仁義なき戦い』も無事終了。不安だったスピーチはちゃんと理解していただけたようで安堵。プリントはリヨンのリュミエール協会所蔵35mm仏語字幕版、広島弁は訳せないにしても、極力ニュアンスを捨てずにがんばった翻訳でした。入り乱れる人物構成についてけないという声もあったが(まあ日本人でも混乱するんで)、とにかく文太さんの男ぶりと、コロッコロ態度を変える金子信雄(山守組長)の最低ぶりだけは会場をがっちりつかんだようだった。写真の右は世界最強の映画プログラマー、ジャン=フランソワさん。ちょうどパリに滞在中の映画研究者平沢剛さんに撮影していただきました。

終了後は近くのレストランで打ち上げ。フランス最強の日本映画マニアも集結して総勢11人に。帰り際に、スピーチからの続きで、脚本家笠原和夫の念頭にあったのは『ゴッドファーザー』でも『バラキ』でもなく、デュヴィヴィエの『我等の仲間』だったと(単に本に書いてあることですが)話したら大層驚かれた。そして明日7月3日は、深作監督の誕生日。今後のますますの盛り上がりを祈るのみ。