2013/08/10

松林要樹監督の新作『祭の馬』試写。「相馬看花」の第二部だが、主人公は人から馬に移った。もの言わぬ馬たちに震災が刻印した身体や表情の変化を、私たちが感じ取れるほどにキャメラは彼らに肉薄している。殺処分は逃れたが避難所に閉じ込められた馬たちが、相馬野馬追というハレの舞台に再び現れるまでの春夏秋冬、そして春、夏へ。このあたりの、時の流れとともに綴られる馬の描写は、山本嘉次郎の名作『馬』さえ思い浮かぶ。美しさを取り戻す馬もいれば、震災後の移動制限のため、周囲の人々の無念の中で衰えてゆく馬もいる。実は、この映画の本当の主役は…いまは書かないでおく。ヒント、長いもの。しかし変に長すぎるのが、かなしいのだ。

チェーザレパヴェーゼ「美しい夏」。ファシズム下の工業都市に住む19歳と16歳の娘たちの不可逆的な夏の日々。静謐とした文体が素晴らしいが、美しいどころか、ほろ苦い青春どころか、ひどく陰鬱な気分になる。