2013/01/07

3月22日公開のポール・トーマス・アンダーソン『ザ・マスター』。サイエントロジーじみた新興宗教に心身のめりこんでゆく復員兵ホアキン・フェニックス、教祖への帰依を深めるごとに姿勢も表情もどんどん歪んでゆく。特に顔つきは左右対称を完全に失う。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』にはまだあったカタルシス微塵もない。PTAにとっては大勝負に出た映画だろうが、ストーリーはもはや因果関係の外側で動いていて、簡単に傑作と呼ぶのはむしろためらわれる混沌ぶり。今どき65mmフィルム(!)で撮影したのも、この混沌の一部としか言いようがない。試写は35mm上映だったが、日本のシネコンではたぶんDCPだろう。アメリカでは70mmプリント(!)も仕上げたらしい。撮影は『テトロ』も手がけたルーマニア出身の豪腕の若手。

要するに、親切な映画ではない。だがその意図的な無骨さがPTAの現在地なのだと、今は理解しておくしかない。


映画保存協会の意見広告。<映画フィルムやビデオテープを捨てないでください>。小森はるかさん(昨年の「桃まつり」参加監督)デザイン。