2012/10/23

『ゴールデン・スランバーズ』(ダヴィ・チュウ)@東京国際映画祭ポル・ポト政権に殲滅された1960年代から1975年までのカンボジア映画史を、生き残った女優や監督、ロケ地の住民の思い出、映画狂の記憶、写真や宣伝媒体、主題歌やラジオ予告の音声、雑草の生えるスタジオ跡地、今はビリヤード場や住宅になった映画館の建物など、当のフィルム以外のあらゆる素材から再建しようとする試み。プレス資料の中の女優たちはとてつもなく可憐だ。そしてプノンペンのシネフィルは、恐怖政治の中で4年間口をつぐみ、いま、現存しない映画の話に花を咲かせる。だが「貴重な映画史の記録」にしては画面作りがクールに計算し尽くされている。映画なしでも映画史は立ち上がる、という自信があるからだろう。消えたものを立ち上がらせると、幻影に見える。だがその果てに、この幻影の連なりこそが歴史なのだと気づく。