2012/09/01

朝、早起きして「日活100年と映画のまち調布」展@調布市郷土博物館。記述にはやや正確さが欠けるが、こういう場所の展示としてはそこそこか。むしろ地元ならではの面白みは、日活と大映の二大スタジオの他に1954年から1960年まで存在した中央映画撮影所(途中から調布映画撮影所)を取り上げていること。独立プロ運動が手に入れた唯一の撮影所であり、香川京子さんも『赤い陣羽織』の撮影時に、すぐ外は一面の畑だったという思い出を語られている。当時その近くには「日本映画俳優学校」があり、これがエキストラ紹介のクロキプロの前身とか。さらに、1962年から調布市長を4期務めた社会党市長が、若い頃東亜キネマのキャメラマンで、その後調布に撮影所(日活多摩川の前身)を建設すべしと進言した人物だったというのも不思議な歴史の巡り合わせ。というわけで、本多嘉一郎「カツドウ屋市長奮戦記」という本を読み始めた。

しかし今日のクライマックスは、東京国立近代美術館「14の夕べ」より、小杉武久「Circuits」ライブ! 同僚とともに早めに着いて、とりあえず「BEER MOMAT」の東京エールを一杯。会場に入ると、カップルも多いし家族連れもいて満席だった。さて何やら音が鳴り始めた頃、会場の隅っこ、私の数メートル先で、竹ぼうきを持って床を掃く老人がいた。あ、高橋悠治! マイクを仕込んだこの竹ぼうき、床を掃くたびに歪んだノイズが鳴り響く。中央でも小杉武久が竹の棒で天井を引っかき、不穏な爆音を生産している。これまで生ける伝説の如く思っていたが、ぎゅわんぎゅわんちゅいーんと電子の轟音を製造し続ける小杉をこの目で見られる日が来るとは。しかも無料で。光に感応する発振器をいくつか並べ、それにいろんな光源を近づけたり点滅させたり、卓上灯の光量つまみを調節したり、そのアクションも人形遣いのようで目が離せない。終了後、好奇心の塊になった観客たち(私も)が、どんな装置で音を出していたのかと小杉のいたデスクに殺到。見ると、太陽電池と電子音発振器はチョコレートの紙箱(!)の中に入っていた。小杉は74歳。前衛音楽の世界も、いちばんかっこいいのはおじいさん。こういう音楽をCDで聴いてもダメだろう。私にとっては、これは人生の体験だったかも知れない。