2012/03/29

「影の部分」読了。いま映画の仕事、とりわけ映画を作るのではなく作られた映画を扱う仕事をする人は、その大半が「映画が好き」という動機をテコにしているはずだ(私もそうだ)。だがこの本には、そういう人間には決して体感できないだろう、飢えや絶望、人の弱さや変節を知ってしまった人間が自己を確立するための「映画」がある。だから、その底に流れる映画への距離と懐疑、そして途方もない冷静さに打たれてしまう。1960年前後の、アルジェリア戦争や東洋人蔑視の生々しいパリの空気を吸い込みながら、読む人間も自省しないではいられなくなる一冊。