2012/03/26

ジョン・カサヴェテスの回顧上映が近づいている。どれだけ多忙な日々が来ても『フェイシズ』だけは観直そう。カサヴェテスの映画は、映画と人生は別もの、という根本的な確信を揺るがしてくる。

フィルム映写機の大手、日本電子光学工業が破産手続に入った一方で、富士フイルムが開発した映画アーカイビング専門のセパレーション用白黒フィルム「エテルナ-RDS」がアカデミー賞の科学技術賞を受賞した。デジタル技術の宣伝力はすごいもので、実に多くの人が漠然と「映画保存はデジタルでOK」と信じているものだから、私などはいちいち「ハリウッドではデジタル撮りの映画でも最終保存媒体はフィルムですから」とか「フィルム保存の方がコストが圧倒的に安いんすから」とか同じことを繰り返さなければならない。すでに発表から随分経ったが、このニュースがどこまでも広がることを願う。そもそも富士フイルムアメリカで賞を受けることも感動的だ。

http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0595.html

3月末で閉じてしまうジュンク堂新宿店で、最後に何か一冊映画の本を買おうと思ったら、これしかないと思える本が並んでいた。秦早穂子「影の部分」、3月26日発行。「真夜中」連載の時から部分的に読んではいたが、配給会社新外映の旧蔵ポスターを展示した「戦後フランス映画ポスターの世界」に関わった人間としては、これだけは真っ先に読まねばならない。冒頭の『勝手にしやがれ』買い付けのエピソードからもう魅惑に満ちている。ラッシュ試写で惚れて買い付けを決めたのに、完成試写ではもう感情が引いていた、夜のシャンゼリゼの光さえ疎ましくなっていたという、そのクールさ…。

なお「影の部分」とは、新外映の前身SEFが輸入したジャン・ドラノワの映画『しのび泣き』の原題(La part de l'ombre)の直訳。