2012/03/25

六本木へ出たら、草間彌生の巨大バルーン「ヤヨイちゃん」に出くわした。新橋に出て、なぜか再び今和次郎展へ赴く。

春名徹「世界を見てしまった男たち 江戸の異郷体験」。滅法面白い。江戸時代の鎖国体制にあって、普通の日本人が外国を知る唯一の機会は、仕事で乗っていた船が漂流してしまい、食糧不足で死ぬ前にどこかに漂着するか外国船に救われること、である。つまり、望んだわけではない旅に人生を翻弄されるというパターンになるが、そんな目にあった庶民の行動と決断を、当時の文献を細かく読み解きながら明らかにしてゆく。まず漂流そのものが生死の問題だが、その後はいろいろで、メキシコで厚遇され、身元引受人の娘と結婚の話まで出ながら帰国した人もいれば、英国船で帰国しようとしたら日本の砲撃に遭い、失意のまま香港の「英国市民」として生きることを決意した男もいた。漂流民の帰国は、幕末の頃であれば日本に開国を迫りたい列強の道具としても使われた。ノンフィクションの太いドラマ性を堪能した。