2012/03/18

國分功一郎「暇と退屈の倫理学」読了。贈呈してくれたNさんありがとう。パスカルラッセル、ヴェブレン、アレントハイデガー、と従来の思想家が語ってきた「退屈」が論じられる。全部読んだことないからそれ自体の流れも面白いが、もっと面白いのは、思想家たちが、その思想以前に凝り固まっていた執着(=理屈後づけの構造)を暴き出すあたり。で、途中で唐突に『ファイト・クラブ』論があったりするから驚く。職業柄興奮した一節は、人間には1秒18コマの映画がスムースに見えても、感覚の鋭敏なベタという魚にはフリッカーが見えているはずだから人の言葉が話せたら文句を言うに違いない、というくだり。そういえば、魚に映画を見せたことはなかったな、さすがに。

ハロルド・ロイド短篇集@シネマヴェーラ渋谷。國分氏の文脈に沿って言うなら、いま「消費」ではない「贅沢」にもっとも近い映画体験は、楽しい無声映画にただ向き合うことではないか。