2011/12/30

今年もひっそりと「オカダが孤独に勝手に選ぶ2011年の映画書ベストテン」を発表してみる。昨年も一昨年も書いたが、映画を網羅的に観ることができないように、映画本を網羅的に読むことも無理。また主題性と着眼点に重きを置いた選考なのでご諒承のほど。

1 全貌フレデリック・ワイズマン土本典昭鈴木一誌編)
2 甦る相米慎二(木村建哉・中村秀之・藤井仁子編)
3 日本短編映像史(吉原順平)
4 映画もまた編集である ウォルター・マーチとの対話(マイケル・オンダーチェ
5 Casa de Lava 『溶岩の家』スクラップ・ブック(ペドロ・コスタ
6 映画学の道しるべ(牧野守)
7 野口久光 シネマ・グラフィックス(根本隆一郎編)
8 アメリカの友人 東京デニス・ホッパー日記(谷川建司)
9 ミニシアター巡礼(代島治彦
10 ジーン・セバーグ(ギャリー・マッギー)
次点 フランス映画どこへ行く ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて(林瑞絵)
次点 伴淳三郎フィルモグラフィ(えんどう左近編)


☆以下はやむなく選から外したもの。順不同。
日本映画史叢書 日本映画の誕生(岩本憲児編)
映画はネコである(宮尾大輔
字幕の名工 秘田余四郎とフランス映画(高三啓輔)
昭和桃色映画館(鈴木義昭
“城ちゃん”在りき 城之内元晴回想文集(城之内美稲子編)
別冊映画秘宝 モスラ映画大全
映画の殿堂 新宿武蔵野館(根本隆一郎編)


☆まだ読めていないが素晴らしいのではないかと思うもの。
「帝国」の映画監督 坂根田鶴子(池川玲子
メカスの難民日記(ジョナス・メカス) *厳密には映画書ではないかも
映画長話(蓮實重彦黒沢清青山真治
映像から音を削る 武満徹映画エッセイ集(武満徹
狂気のなかにいた役者 川谷拓三伝(奥薗守)
日本映画論1933-2007(加藤幹郎
越境の映画監督 日夏英太郎(日夏もえ子)
シネ砦 炎上す(安井豊作)
結局、極私的ラディカリズムなんだ(鈴木志郎康

知の一翼としての映画の居場所が狭くなりつつある中、よくこれだけ充実した本が次々出るものだと思う。1位から3位までは動かない。2位は自分も関わっているが、だからといって挙げないのは他のすべての文に申し訳ないので…。5位は、実物を手に取った時の驚きが大きかった。あと今年は7位をはじめ、映画ポスターのスペシャリスト根本隆一郎さんのご活躍に目を見張った。8位はただただ愛に満ちた本。「アメリカの友人」という題名があまりにもぴったりくる。次点は、パリ在住者の目線で見た現代フランス映画界の素描として新鮮だった。もう一つの次点は市販書ではないが、山形県米沢市の「伴淳の会」が編集した100部限定の労作。坂根田鶴子、日夏英太郎ら、映画史研究からは重要な人物に迫る著作が出たのも嬉しいが、いかんせんまだ読んでいないのであった。

ところで、福島県には、今もカーボン光源の映写機を動かせる劇場がある! 震災の前から育まれていた復活の力。応援したい。
http://www.pref.fukushima.jp/bunka/kindai/page_04.html
今年の日記はこれにて終了。2012年もどうぞよろしくお願いいたします。