2011/11/23

フレデリック・ワイズマンの日本初上映作『ミサイル』。製作はまだ冷戦の枠組みが残る1987年、核弾頭付きICBMミサイルの発射を司る空軍兵に志願した訓練生たちの日々。訓練生は職業軍人だけではなく、大学院生も交じっていたりする。これで単位が取れたりするのだろうか。ミサイルそのものは画面に出てこないが、彼らが扱う発射装置の機能は詳しく説明される。映画に撮られているということは、装置やコンソールはソ連に観られても構わないらしい。誰もが知る通り、誤った使い方をすると世界が破滅してしまうマシンなのだが、訓練の内容そのものはニホンの自動車学校で運転を学ぶのをちょっと複雑にした程度に思える。そこがちょっと怖い。

ワイズマンの映画は、人の目にあまり触れない場所で日々行われていることが、多くの人の漠然とした想像とは違うという点をいつも露呈させる。この映画が与えてくれるのも「冷戦の最先端ってこんなもん?」という印象だ。だが同時に、当の空軍基地が求めるものであろう、彼らの日々の教育プログラムの紹介として成立していることも事実だ。つまり視線の「枠」をどこに置くかで映画の位相も変わってしまう。あらゆる読みの形に耐えるしぶとさもワイズマン映画の強みか。