2011/11/05

アメリカ議会図書館による視聴覚素材の保存は、多分そうだろうと思ってはいたが、2009年に見学したフランス国立図書館の視聴覚部で行われていた「過去の全映像フォーマット保存」をさらに大規模にしたものだった。可燃性フィルムから今どきのゲームソフトまで、あらゆる過去の映像遺産を再生可能な形で保存し、同時にデジタル化作業もロボットを駆使して進めている。万一の災害のために、100キロほど離れた場所でも同じデジタルデータをバックアップできる「ダーク・アーカイブ」の存在に感動。名前がそもそもいい。

パトリック・ロックニーさん選定による議会図書館秘蔵のフィルム上映。日本の海女の家族に材を採った『海女ガール』(1958年)は、日本の伝統的な漁村生活をテクニカラー・プリントで観ること自体が不思議な体験。時期的に考えて撮影はテクニカラーキャメラではなくイーストマンカラー撮影(恐らく5248タイプ)と思われるが、青の発色が生々しい。赤ちゃんの赤いおべべも、テクニカラー対応かなと。でも、本当の驚きは『ゴールド・ディガーズ』のオリジナル・ネガフィルムから直接起こされたという「影のワルツ」のフッテージ。いくら断片でも、バスビー・バークレーの超絶世界をフィルムで観られることの快楽は何にも代え難い。暗部のグラデーションが美しすぎる。

さて、森話社の「日本映画史叢書」全15巻がついに完結! 岩波書店の「講座 日本映画」全8巻(1985-88年)を<旧約聖書>、「日本映画は生きている」全8巻(2010-11年)を<新約聖書>と呼ぶなら、この叢書はどう位置づけたらいいのだろうか。