2011/10/01

午前10時、未所蔵図書の探索のため、図書室スタッフとともに「五反田アートブックバザール」@南部古書会館へ。2年か3年前か、こういう古書イベントに直接足を運び始めたら「あの連中、大した予算はなさそうだがそれなりに買う気らしい」と思われたようで、いくつものお店から定期的に古書カタログが届くようになった。だがそうすると、カタログだけですべて分かった気になってしまい、仕事が多いのを口実に古書展に顔を出すのをやめてしまった。ところが今日久々に参上して、棚をよーく眺めてみると、見たことのない映画書がいくつか並んでいる。やはり本は足で稼ぐべし。大いに反省。それにしても、すでに3万冊も所蔵しているのに、即座に「これは図書室にあります」「これは見たことありません」とほぼ正確に所蔵状況を答えられるスタッフは心強い。

ダッシュで京橋へ行き、正午から常設展ギャラリートーク。「日本の映画ポスター芸術」展の宣伝も兼ねて、日本の映画ポスター史序論。

アテネ・フランセ文化センターの「甦る相米慎二」出版記念イベントへ向かう。『お引越し』ニュープリント上映の後、ベストメンバーというしかない伊地智啓(プロデューサー)、榎戸耕史(監督)、奥寺佐渡子(脚本)各氏のトーク。途中から冨樫森監督、助監督だった原正弘さんも交えてさらに豪華に。田畑智子という主演女優(子役ではない)を見つけるまでの過程とか、ラストでレンコが夜の森を踏破するシーンはシナリオ決定稿にもなかったとか、唖然とするエピソードだらけ。終幕間際、司会の藤井仁子さんが、あえて伊地智さんに「ご自身にとって相米慎二の一本とは?」という無茶な質問をしたら、間髪入れず「『翔んだカップル』です」。しびれた。会場で、日活ロマンポルノの研究書を出すべく来日中のディミトリ・イアンニさんに再会。伊地智さんにもインタビューされたと聞き、ますます期待が高まる。

週明けから書店に並ぶという「甦る相米慎二」は、間違いなく今年のベスト映画書の一つ(自分が拙い文を寄せたからといって讃辞を贈らないのは他の全関係者にあまりに失礼)。映画を「作る人」の言葉と「論じる人」の言葉が、乖離することなくむしろ調和を見せている点に大きな価値がある。この大著、いったいどこから読むか? まずは何が何でも監督の「共犯者」伊地智氏のインタビュー(濱口竜介監督の質問が素晴らしい)、次に1990年の相米自身の講演録@札幌大学、そしてスタッフの方々の語りに触れて、あとはどこから読んでもいいと思う。相米ではなく黒沢清の『台風クラブ』があり得たかも知れないというくだりには、意識がふっと遠くへ飛んでしまった。