2011/09/14

川島雄三『女であること』(1958年)。犯罪者を父に持つ少女(香川京子)を引き取って住まわせている弁護士とその妻(森雅之原節子)。そこへ大阪から勝ち気なアプレ娘(久我美子)が飛び込み、妻の昔の男(三橋達也)が偶然現れるに至って、一家をめぐる人間関係が傾き始める。どの人物にもやや人工的なキャラクターをまとわせた川島流のうまさ。映画史には、原節子久我美子のキスシーンというものも存在するのだと知った。

柳下美恵さんのピアノ演奏でレフ・クレショフ『掟によって』。殺戮の犯人と、それを監視する男と女。息づまる三人の留まる粗末な小屋が、大河の増水で見る見る床上浸水に。迫り来る水をめぐる内と外のダイナミズム。ラストの大木の下での絞首刑のシーン、そのエネルギー量にはワンカットごとに圧倒される。映画自体がかなりの抽象性に達しているので柳下さんにも難問だったと思うが、静寂も生かした音の演出が見事だった。

なおこの映画、『掟によって』と『法に従って』の二つの名で呼ばれるが、後者の方が合っているようだ。