2011/09/05

昨日終えられなかった原稿を書きにまた職場へ。どうにか入稿!

映画メモ。『風にそよぐ草』@東宝東和試写室。一瞬石川達三かと思うよ、この題名は。アラン・レネというのは話法の人なので、いつもその話法にノレるかどうかが分かれ目になる。だが近年は(『恋するシャンソン』ぐらいしか観てないが)話法に付き合うことを苦にさせない軽さがあって、全能者の視点で人物を俯瞰するようなこの映画の技巧もそれなりに楽しめる。ストーリーは、ありていに言えば、ひったくられ駐車場に落ちていた中年女の財布を拾ったおじいちゃんの妄想譚。女との出会いに妄想を膨らませるアンドレ・デュソリエの、異常な行動にまで出てしまう情けない芝居が絶品だ。それにしても、フランスでは男も女も60代まで色恋に煩悶するのが当然、という前提で作られているのは考えさせられる。スクリプターは、今でも御大シルヴェット・ボドロ。スタッフ・クレジットのトップに輝いていた。

渋谷へ。少なくとも1995年頃までのクリエーション・レーベルは私の身体の一部だと信じているので、吸い込まれるように『アップサイド・ダウン クリエーションレコーズ・ストーリー』@シアターN渋谷(男性は月曜日1,000円)。映画としては、当事者や関係者のインタビューと当時のフッテージを散りばめながら、クリエーションの盛衰をジェットコースター式に語るという、ほぼ予想されたスタイル。これを観て、プライマル、マイブラ、そしてオアシスとあれだけの商業的成功を手にしてなお、なぜ慢性的な経営難だったのかという疑問が解けた。ドラッグのやり過ぎのせいではない。要するに、アラン・マッギーが「これはいい」と思ったら、金の勘定を度外視して、新人バンドでもどんどん契約してアルバムを作らせていたからだ。オアシスらの大ヒットの陰で、やたらめったら無名バンドのアルバムが出ていたことをファンは知っている。その中に地味にリリースされていた無数の良盤があったことも。あの層の厚さがクリエーションの魅力で、それが世界的ヒットの源泉でもあったが、一方で経費も膨大にかさんだのだ。というわけで、ジャズ・ブッチャーかフェルトあたりを聴きながら眠ることにしよう。