2011/08/19

生田耕作「ダンディズム 栄光と悲惨」読了。19世紀英国に生きた究極のダンディ、ジョージ・ブランメルの肖像。身だしなみにこだわり、それに蕩尽することだけがダンディの条件ではない。公然と人を見下し、知識やスポーツを嫌い、恋愛から生涯遠ざかり、ギャンブルを好み、寸鉄人を刺す機転だけで社交界を渡るはったり、そして徹底的なナルシシズムを芸術の域に高めなければダンディズムとは呼べないという。ある種、裏返しの修行僧みたいな人生だと思う。虚無に価値を与えた男としてブランメルを描く生田の筆致も冴えている。