助監督かアーキヴィストか

今日から、ボワ・ダルシー市にある国立映画センターのアーカイヴ部門(CNCアルシーヴ)。途中、モンパルナス駅でシネマテークのサン=シール保存庫へ出勤中のマチュー・グリモーくんに偶然出会い、同じ方向なので列車で雑談。アニメ作家のグリモー(『王と鳥』)と名前が同じということで、アニメーションの話になる。フランスは映画が好きで成熟した好青年がかなり多いな、という印象を強くする。

迎え入れてくれたのは、FIAF(国際フィルム・アーカイヴ連盟)の主要メンバーとしても活躍されている保存部長のエリック・ル・ロワさん。ここでの主なテーマはフィルムのデジタル化とその活用。ここはフィルム現像所を持つ伝統的な映画保存の拠点であると同時に、フランスにおける映像デジタル化の重要拠点であることもよく分かる(最重要拠点は国立視聴覚研究所=INAですが)。ただし、デジタル・アーカイヴに過度の重点を置くことなく、フィルムとデジタルの使い道をしっかり弁別して仕事を構築している。むかしはシネマテーク・フランセーズと敵同士だったCNCアルシーヴだが、今はさまざまな事業で協力している。特にここには28mmだの15mmだの75mmだの、普通の映画関係者なら生涯耳にすることのないだろうマイナーな規格のフィルムに対応できるスキャナーがあり、ここに頼るしかない仕事も少なくない。映像視聴システムを体験させてもらったがなかなか使いやすかった。ちなみに視聴したのはジョルジュ・ルーキエの文化映画『児童手当』と『馬車』。前者は、子どもの多い家族に会社が手当を支給するようになった経緯を説明したもの。後者はノルマンディーで馬車の車輪を専門に作る一家の仕事ぶりを記録したもの。やっぱ文化映画ってどの国も面白いなあ。

エリックさんの執務室にはやたらとジャン=ピエール・モッキー作品のポスターが貼ってある。彼の書いたモッキーのモノグラフィを書店で見たので専門家だとは気づいていたが、なんと若い頃にモッキーの助監督をしていたのだそうだ。へええ。それからシネマテークのサン=シールで働いて、「裏切り者と言われながら(笑)」こっちへ転じたのだとか。助監督やってた映画アーキヴィストってあんまり知りませんね。

今日は疲れたのでべナゼラフは諦めることに決定。