2013/09/09

ギヨーム・ブラック監督『女っ気なし』(+短篇『遭難者』)試写。ジャック・ロジエのフォロワーというか、ほぼ『オルエットの方へ』フォロワーと言っていいが、ロジエほど映画原理に委ねるのではなく、情感を生むための細やかな演出や編集も大切にする人だった。海辺の避暑地の話だが、そこに住む冴えない地元男が主人公であることが、そもそも繊細さの源。冴えなくて、とことん優しい奴。その男も、バカンスの母娘も、キャラクターを入念に育てている感じがして好感(特にちゃんとしてるようでいてやや軽率な母親が)。こういう、小さな宝物のような映画を生み出し続けるのが、フランス映画だけに残された価値だろう。

で、2009年の『遭難者』の撮影フィルムがコダック、2011年の『女っ気なし』は富士フイルム。富士の画調が気に入ったのか、その後製作する新作長篇のため、監督は製造停止になる富士の撮影用フィルムを日本まで買い占めに来たという。いい話じゃないか。東京では11月2日公開。