2013/05/07

映画をどのように作るか以上に、映画が何でできているかを、静かに、激しく思考してきた岩佐寿弥監督が突然いなくなってしまった。『叛軍No.4』などは、世界のドキュメンタリー史を一気に相対化してしまう恐ろしい映画だ(もしラストに最首悟が登場しなかったら…と今でも思う)。だが『叛軍No.4』と『眠れ蜜』のニュープリント作製のご相談の際に知った監督の温和な人柄は、作風の大胆さとあまりに対照的だった。私も愛読していた「週刊将棋」をカバンに挿していたのも微笑ましかった。そして昨年公開された『オロ』は、明らかにこの先の展開を期待させる映画で、決して「遺作」であってはならなかった。私たち日本の観客も悲しいが、オロくんの落胆を想像するともっとせつない気持ちになる。

私は、どれだけテレビ局に残存しているかは分からないが、監督のもう一つの仕事だった外国取材のテレビ・ドキュメンタリーを観たいと思う。それは『オロ』にも活かされていたはずだ。オロくんがダラムサラの階段を歩くシーンを思い出して、そんなことを考えた。「neoneo」は素晴らしいインタビューを残してくれたが、私ももっと色々なことを訊いておくべきだった。ご冥福を祈ります。

数年前、S書店で偶然見つけたチラシ。