2013/04/08

里見トン「文章の話」。不気味に面白い。1937年だから「綴方教室」なんか流行った頃だと思うが、最終章を除いてほとんど文章の本ではない。「言葉と思想」とか「自と他」とかもっともらしい文が並ぶが、いわば当然のことばかり書かれている。それなのに快楽がある(細部の実例がこれまた面白い)。「内容」ではなくて「語り」だけがあるという感覚。そのこと自体が里見のメッセージであり、それがよく伝わってくる。これ、まさに小津安二郎映画の底を流れる思想だろう。小津が里見に信頼を寄せていた理由がよく分かった。

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』@シネマライズ渋谷。噂の映画となってから劇場公開を待つこと5年、やっと宿願を果たした。シャー・ルク・カーンはいい。本当にいい。見方によってはトム・クルーズ以上と言ってもいい。彼は三枚目もできるからだ。インドのオールスター集合らしいダンスシーンがあったが、『踊り子』のレーカーしか分からなかった。しかし『ドリーミー・ガール』の看板の右に「『炎』まだ上映中」の看板があったのは気づいた。