2013/03/04

大正時代、今でいう西新宿の映画館に松井須磨子という女流活動弁士がいたそうだ。伝説の新劇女優松井須磨子とは同名異人、というか勝手に同じ名を名乗ったんだろう。女性だが女の声が出ないので尾上松之助の声色専門というすごく異色の人だったという。1917年の全国活動写真弁士番付の女流弁士の欄にこの名前があって、今までなんだこりゃと思っていたが、ある方に御園京平の本を見せていただいて謎が解けた。活動弁士の世界はやっぱりアナーキー
そういえば大正中期、京橋日活館の2階は、日活が開いた活動弁士養成所だったそうだ。つまり今のフィルムセンター大ホールの場所…。

試写『ベルトルッチの 分身』。革命と演劇の祭壇に捧げられた暴れん坊の聖クレマンティ様(×2)を仰ぎ見て呆然、ときどき爆笑。ゴダール『中国女』を解体してもう一度素手で組み立てたような異様さだ。『革命前夜』のネクストステージ、「革命当日」(ただし不発)の映画でもあった。ここまでやっちゃったから、解脱後の大きな世界(『暗殺のオペラ』)が開けたのだな。若いって素晴らしい。テアートロ!の叫びが耳に残る。必見。

舟を編む』(石井裕也)@アスミック試写室。大手出版社では日陰の存在でしかない辞書編集部で、15年かけて一冊の国語辞典を編纂した老若編集者と学者の物語。読書家らしい松田龍平の役柄も含め、もう少し仕事の専門性に突っ込んでもいいかなと思ったが、最後まで語りに痩せたところがなく、2時間13分がまったく長くない。でかい猫好きとしても満足。あと蛇足ながら、ほぼ15年かけて某事典の編集をしている知人がいるので、もっと大切にしようと思いました。