2012/08/20

朝っぱらからもう暑いけど、立川の国文学研究資料館へ文献調査に行ってみた。文学系にしてはやけに大きなビルだな(しかも新築)と思ったら、国立極地研究所統計数理研究所も一緒に入っていた。実際、ペンギンの剥製と源氏物語の写本があっさり同居しているからおもしろい。将来は「中世低温科学文献統計学者」が出現するのかも知れない。

『ひとつの歌』(杉田協士)@映画美学校試写室。人物をあえて日常の街の中に置き、その街の時間に沿いながら、日頃は意識しない街の雑音をあらん限りすくい取る。部屋の冷蔵庫のブイーン音まですくい取っている。映画という制度の中の時間と私たちが生きている時間を区別してはならない、という固い意志を感じる。しかも画面は固定ショット中心のスタンダード・サイズ。そんな意志が、ふと恩寵に転じる瞬間がいくつかあった。例えば、写真屋の娘が青年の写真を褒めるシーンから、海辺のデートへつながるあたり。ここは、ひょっとすると『恋恋風塵』が乗り移っていたのかも知れない。二人が駅のホームで会話をした後、左右から列車が入ってくるところも驚いた。そして「いま自分の周囲にいるこの人たちと一緒に映画を作ること」が作品の本質であるという確信は、前作『河の恋人』よりさらに大きい。今どき映画界のどこにもない感触だ。ただ一つ短所があるとすれば、映画より先にその誠実さ自体が見えてしまうことか。しかしそれも先刻承知という感じがする。