2012/08/06

試写で『カルロス』(オリヴィエ・アサヤス)。実在した国際テロリストの像を描くために、おびただしい数の人物と都市、そして少なくとも8か国の言葉が、必要最低限の条件と言わんばかりに駆使されている。だが、この5時間半を、過激な半生を送った男の栄光と没落の物語としてしか見ないのは貧しい。むしろ今『カルロス』が過激なのは、映画を「銃と車と酒と女」に徹底的に還元しようとする、オトコくさい古典性に貫かれているからだ。21年間で、太ったり痩せたり体型の変わりまくるカルロス役の俳優は、明らかに映画のペースに乗って生きている。OPEC総会襲撃シーンのカルロスなどは、何かが乗り移った感さえある。アサヤスの最高作だと思うし、未来から見てフランス映画史の一ページを飾ることになるだろう。