2012/03/22

フランスのシネマ・グラフィック界(というものがあればだが)では、アラン・レネ『風にそよぐ草』のポスターを人気バンドデシネ(BD)作家のブラッチ(Blutch)が手がけたことが話題らしい。BD方面は全然詳しくないが、ブラッチは1990年代以降もっとも重要な描き手の一人だという。

そして昨日、シネマテーク・フランセーズの知人たちから贈り物としてブラッチのBD作品が届いた。題名は"Pour en finir avec le cinéma"、映画に別れを告げるために、ぐらいの意味か。中年になった映画狂いの男が、俺はどうしてこんなに映画に拘泥して生きてきたのか、と奔放でだらだらした夢想と思索を繰り広げる。だが女たちは、映画なんて所詮女の子をつかまえるための捕虫網よ、映画なんて忘れたら、とそっけない。出演者はバート・ランカスタージャン=リュック・ゴダール(釣り人)、ルキノ・ヴィスコンティ、アラン・キュニー(映画なんてゴミ箱だと言う)、ウィリアム・ホールデンアラン・ドロンサシャ・ギトリカーク・ダグラスオーソン・ウェルズミシェル・ピコリ、ジェイソン・ロバーズ、ポール・ジェゴーフ、モーリス・ロネ、その他いっぱい。シーンが目まぐるしく変わるのはゴダール『映画史』みたい。シネフィリーの黄昏が濃密に迫ってくる。

ブラッチ画 『風にそよぐ草』ポスター(原題は「生い茂る雑草」の意)