2012/02/29

「伝説の劇画師 植木金矢展」@弥生美術館。戦後少年たちのチャンバラ愛好は、東映時代劇を観ることにとどまらない。スターたちが「主演」するチャンバラ漫画を読むことが、映画を観るよりずっと安くて、しかも血湧き肉踊る娯楽だった。スクリーンと同じく、そこでもアラカンや千恵蔵(の顔をしたキャラクター)が正義の剣士だったり、月形(の顔をしたキャラクター)が悪の頭領だったりした。つまり、本物の映画の先に、もう一つ「紙の上の映画」があったのである。このジャンルを背負ってきた植木金矢画伯には、骨の髄からチャンバラ映画のストーリー感覚とリズムが染みついている。映画を逸脱したところにまた映画があるという発見の楽しさ。

面白かった劇画作品が「神変じごま」。フランスの本家「ジゴマ」は悪党だが、千恵蔵の顔をしているこの「じごま」は善玉の怪剣士。名前だけもらったらしい。しかも「じごま」というのは独楽の名前だという。超フリーダムな物語世界。