2011/12/12

12月12日は赤いやかんの日。

講義の後用事のため神保町に向かっていたら、地下鉄内で岩波ホールご一行とばったり。もうすぐ公開の『風にそよぐ草』の面白さをどう世間に伝えるべきか。知的な話法はいつものレネだが、ありていに言えば壮年ストーカーの話だったりもする。明らかに犯罪をしているのだが。

そしてユーロスペースで『トーキョードリフター』(松江哲明)。『ライブテープ』に続いて、今度は雨の夜に前野健太は歌い続ける。新宿のカレー「ガンジー」の前。明大前の踏切の前。渋谷H&Mの前、109の前。そして、店外の照明が消されて店内だけ明るいコンビニの前でシルエットになって歌う前野に、確かに震災後の異常な東京を見ることはできる。だが、これが震災を表象する映画なのかというとそうでもない。そうでもないが、それでいいのだ。人には人の持ち場がある。ただ、震災から2か月半を経過してなぜ前野健太にトーキョーの夜を漂流させたのか、そのことは、作家の言葉として真っすぐ語られても良かったように思う。

階段を下りると、ビルの1階で安井豊作さんの出版記念パーティが行われているようだった。かつて「シティロード」の安井さんの星取表には毎月シビレていた。待望の著作。