2011/12/08

「日活向島と新派映画の時代」展@早稲田大学演劇博物館。もはやフィルムのほとんど残存していない向島時代(1913-23)の日活を、展覧会で浮かび上がらせるのは一つの挑戦である。そのための方法として、当時の新派俳優や監督など、個々の人物別に貢献を掘り下げた構成がすこぶる面白い。映画演出の革新を志した田中栄三や伝説の監督鈴木謙作の位置づけもよく分かり、『京屋襟店』の損失が改めて惜しまれる。また、向島だけでなく同時代の東京での映画製作に視野を拡げており、関東大震災以前の“映画都市”東京の姿が一望できるのも稀有な機会だ。あと、驚いたのがキャメラマン三浦光雄の写真アルバムが展示されていたこと。数年前に古書展に出ていたものなので、ついに演劇博物館が購入したわけである。入るべき所に入ったというよりない。

弥生美術館「伝説の劇画師 植木金矢展」が来月から始まる。戦後の少年雑誌にチャンバラの挿絵を描き続けた絵師はいまもご存命。剣戟映画をスクリーンの内側だけで考えてはいけないと思い知らされる。とにかく楽しみ。